さくらのIoT

IoTカメラは、従来のカメラにインターネットへの通信機能を組み合わせることで、遠隔地からのモニタリングや操作を可能にするデバイスです。防犯や見守り、遠隔監視など、さまざまな分野で活用が広がっています。
本記事では、IoTカメラの基本的な仕組みや特徴、具体的な活用事例、導入時の注意点などを詳しく解説します。

IoTカメラとは

IoTカメラとは、インターネットに接続できるカメラのことです。IoTは"Internet of Things"の略称で、モノにインターネットへの通信機能を組み込むことで、遠隔地からのモニタリングや操作を可能にする技術を意味します。

IoTの技術はカメラ以外にも、スマートフォンやスマート家電、ウェアラブルデバイス、センサーなどに広く搭載されており、私たちの生活や産業のあらゆる場面でその活用が進んでいます。スマートファクトリーやスマートシティのように、IoT機器の活用を前提にした環境作りも広がりつつあります。

従来のカメラと比べ、IoTカメラはインターネットを介して遠隔地から映像を確認したり、クラウドサーバーに映像を直接保存したりすることが可能です。

IoTカメラの主な活用方法としては、防犯カメラによる監視や、工事現場・倉庫などの遠隔監視、農作物の生育状況の把握、店舗内の人流分析によるマーケティングなどが挙げられます。遠隔からリアルタイムに状況を把握できるIoTカメラは、さまざまな業務の効率化や課題解決に貢献しています。

IoTカメラの活用分野と活用事例

IoTカメラは、幅広い分野においてさまざまな用途で活用されています。ここでは、具体的な事例を交えながら、IoTカメラの活用方法を詳しく見ていきましょう。

建設現場・工事現場

建設現場や工事現場では、IoTカメラを遠隔監視に活用しています。現場の各所や資材置き場などにカメラを設置し、本社など離れた場所からリアルタイムに現場の状況を確認できるようにします。これにより、複数の現場をまとめて管理したり、異常の早期発見や迅速な対応に役立てたりできます。

IoTカメラは、現場の安全管理や品質管理の改善にも効果的です。作業員の動きや建機の稼働状況を細かくチェックできるため、危険行為の抑止や事故防止につながります。また、AIによる画像解析をおこなえば、工程の自動モニタリングや品質の自動検査なども可能になります。建設現場のDXを推進するうえで、IoTカメラは欠かせないツールといえるでしょう。

物流・倉庫

物流や倉庫の現場でも、IoTカメラの活用が進んでいます。倉庫内の荷物の保管状況を遠隔から確認したり、ピッキングや仕分けの作業状況をリアルタイムに把握したりするために役立てられています。

従来のカメラに比べ、IoTカメラは広大な倉庫内の様子を一括して管理しやすいというメリットがあります。また、映像をAIで解析することで、荷物の破損や紛失の検知、作業員の動線分析による業務改善、自動化設備との連携など、より高度な活用も可能です。IoTカメラは、物流のスマート化を支える重要な基盤技術の1つといえます。

飲食店

飲食店でも、IoTカメラの導入が増えつつあります。厨房内のカメラで調理状況を確認したり、ホール内のカメラで客席の混雑具合を把握したりするなどの使い方ができます。

IoTカメラとAIを組み合わせれば、来客数のカウントや客層分析、混雑予測など、マーケティングに役立つデータの収集も可能です。また、従業員の接客状況を分析して、サービス品質の向上に活かすこともできるでしょう。人手不足や業務効率化が叫ばれる飲食業界において、IoTカメラは店舗運営を改善する有力なツールになり得ます。

農業・漁業

農業や漁業の分野でも、IoTカメラの活用事例が増えています。たとえば農業では、田畑の状況を遠隔からモニタリングするために使われます。作物の生育状況を定点観測したり、鳥獣被害を早期発見したりするのに役立ちます。

水産養殖の現場では、生け簀内の魚の様子を管理するためにIoTカメラを活用します。遠隔地からでも魚の遊泳状況や死魚の有無などをチェックできるので、異常の早期発見と対応が可能になります。

IoTカメラとAIを連携させれば、収穫適期の判定や魚の成長管理の自動化なども実現できます。人手不足が深刻な第一次産業において、IoTカメラは省力化と生産性向上に大きく貢献するツールといえるでしょう。

防災

IoTカメラは、防災分野での活用が進んでおり、道路の冠水や浸水などの状態把握に役立っています。これにより、地域住民への適確な情報発信が可能となり、自治体職員の巡回作業のリスク軽減にもつながります。さらに、河川や水路の異常を瞬時に検知する能力は、災害発生時の迅速な対応に不可欠です。

従来のカメラと比較して、IoTカメラは常時接続されたネットワークを通じてデータを送信するため、リアルタイムでの監視が可能です。また、センサーと連携して環境データを収集し、高度な画像解析をおこなうことで、より正確な情報を提供します。

防災ソリューションとしてのIoTカメラの利用は、単に災害時の対応を改善するだけでなく、予防策としての役割も果たしています。定期的なデータ分析により、危険予測と警告システムの一部として活用され、災害発生の可能性を事前に把握し、対策を講じることができます。

防犯

防犯は、IoTカメラの代表的な活用分野の1つです。住宅や施設の敷地内にカメラを設置し、不審者の侵入や不審物の発見、犯罪の抑止などに役立てられています。

IoTカメラはインターネットに接続されているため、遠隔地からリアルタイムに映像を確認できます。これにより、警備員の巡回を減らしたり、異常時の迅速な対応を可能にしたりできます。

AIによる画像解析をおこなえば、不審者や不審物の自動検知、特定人物の認識など、より高度なセキュリティ対策も実現可能です。防犯カメラの設置は犯罪抑止に大きな効果があるとされており、IoTカメラの普及はその効果をさらに高めることが期待されます。

生態調査や研究等

IoTカメラは生体調査や研究等でも活用されています。IoTカメラとアイトラッキング技術を組み合わせることで、より詳細な生体調査・研究が可能になります。

アイトラッキング技術とは、人の視線を追跡し、どの情報を見ているのかを解析する技術です。専用のカメラやセンサーを用いて、瞳孔の位置や動きを計測し、視覚的注意や認知プロセスを詳細に分析することが可能です。この技術は、ウェブサイトのユーザビリティテストや広告効果の測定を実現したり、さらには心理学や人間の行動や意思決定の研究調査研究においても活用されております。

交通

IoTカメラは交通分野においても重要な役割を果たしています。スマートハイウェイの構築においては、渋滞状況をリアルタイムで可視化し、交通流の最適化に貢献しています。

従来のカメラと比較して、IoTカメラは高度な通信機能を備えており、収集したデータを即座に分析し、交通制御システムにフィードバックすることができます。これにより、交通事故の予防や迅速な対応が可能になります。

スマートハイウェイでは、IoTカメラを通じて得られる情報を活用し、ドライバーへの情報提供や自動運転車のサポートなど、安全で効率的な道路環境を実現しています。

IoTカメラを導入するときの注意点

IoTカメラはさまざまな分野で活用できる有用なツールですが、導入する際には十分な検討と準備が必要です。ここでは、IoTカメラを導入するうえでの注意点を説明します。

IoTカメラをうまく活用するためには、導入前にしっかりと目的を定め、それに合った製品選定とシステム設計をおこなうことが重要です。

IoTカメラ導入の目的を明確にする

IoTカメラを導入する前に、まずはその目的を明確にすることが重要です。漠然と「カメラがあれば便利だろう」という理由だけでは、十分な効果は得られません。

監視や見守りのために使うのか、業務の効率化が目的なのか、マーケティングに活用したいのかなど、具体的な用途を想定し、達成したい目標を設定しましょう。そのうえで、必要な機能や性能を備えた製品を選定していきます。目的を明確にすることで、適切なシステム設計やコストコントロールが可能になります。

導入コスト・運用コストに合った効果が得られるか確認する

IoTカメラの導入には、初期の機器調達コストだけでなく、継続的な通信コストや管理コストも発生します。こうしたトータルコストを見極め、投資に見合った効果が得られるかを慎重に検討する必要があります。

カメラの台数や撮影頻度、データ保存期間などは、目的に合わせて適切に設計しましょう。過剰な性能やオプションは、コストを押し上げる要因になります。また、長期的な運用を見据えて、メンテナンスや機器の更新サイクルについても考慮が必要です。費用対効果を十分に検証し、最適なシステム構成を目指すことが重要です。

セキュリティ面で問題がないか確認する

IoTカメラはインターネットに接続されているため、サイバー攻撃のリスクに晒されています。不正アクセスによって映像データが外部に流出したり、カメラが乗っ取られて攻撃の踏み台にされたりする危険性があります。

こうしたリスクに備えるには、適切なセキュリティ対策が欠かせません。パスワード管理の徹底やファームウェアの定期的な更新、暗号化通信の採用など、多層的な防御策を講じる必要があります。とくに個人情報を扱うケースでは、プライバシー保護にも十分な配慮が求められます。セキュリティポリシーを明確にし、システム全体で高いセキュリティレベルを確保することが重要です。

安定したネットワーク環境が確保できるか確認する

IoTカメラは、リアルタイムに高画質の映像を送受信するため、大容量の通信が発生します。安定した動作を保証するには、それに見合ったネットワーク環境の整備が不可欠です。

有線LANの利用が望ましいケースも多いですが、屋外など配線が困難な場所ではモバイル通信の活用も検討しましょう。ただしその場合、通信の安定性やコストの面で課題が生じる可能性もあります。

導入予定の場所で事前に電波状況を調査し、必要に応じて専用の無線機器を用意するなどの対策が求められます。また、ネットワークの冗長化やバックアップ回線の確保なども検討課題となるでしょう。IoTカメラの安定稼働を支えるインフラ基盤をしっかりと設計することが肝要です。

非常時にも電力が確保できるか確認する

防犯や防災など、非常時の監視を主目的とするIoTカメラにとって、停電への対策はとくに重要なポイントです。電源が絶たれた途端に機能停止してしまっては、肝心なときに役に立ちません。

バッテリーや発電機などによるバックアップ電源の確保は必須といえます。長時間の停電にも耐えられるよう、十分な容量を備えておく必要があります。また、事前の動作確認や定期的なメンテナンスも欠かせません。非常時のシナリオを想定したうえで、信頼性の高い電源設計をおこなうことが求められます。

IoTカメラは、電力をはじめとするインフラ面の備えがあってこそ、真価を発揮できる技術だといえるでしょう。導入に際しては、こうした点もしっかりと確認・検討しておくことが大切です。

最低限のプライバシーが守られているか確認する

IoTの普及に伴いカメラ画像の利活用が進む一方、プライバシー侵害への懸念も高まっています。
カメラを設置・運用する際には、意図せずプライバシー侵害や個人情報保護法、肖像権に違反しないよう配慮する必要があります。具体的な配慮事項については、経済産業省・総務省が発行している「カメラ画像利活用ガイドブック」に記述されていますので必ず確認してください。生活者と事業者双方の理解と信頼関係に基づいた、健全なカメラ画像利活用を目指しましょう。

まとめ

本記事では、IoTカメラの概要や特徴、活用事例、導入時の注意点などについて詳しく解説しました。IoTカメラは、遠隔からのリアルタイム監視を可能にする技術として、防犯や見守り、業務の効率化など、幅広い分野で活用が進んでいます。

建設、物流、農業、防災、学術研究など、さまざまな領域でIoTカメラの導入事例が増加しつつあります。従来のカメラと比べ、遠隔操作やデータ解析、AIとの連携など、IoTカメラならではの利点を活かすことで、これまでにない価値を生み出すことができるでしょう。

Antenna-eye

さくらインターネットは、社会のDXに寄与するために、かねてよりDXを実現したいあらゆる企業との協業や連携を推進しています。その取り組みのひとつとして、2023年3月1日にはエレコム株式会社とDXアンテナ株式会社と連携して、クラウド録画サービス「Antenna-eye」を提供しました。ウェアラブル対応ウェブカメラや監視カメラなどの映像を、クラウド録画およびリアルタイム再生できるサービスとなっています。

特徴としては、多様なカメラデバイスをサポートしており、店舗や工場・倉庫、住宅などさまざまな場面における定点監視が可能です。さらに、ウェアラブル対応ウェブカメラと組み合わせることで、作業の遠隔モニタリング・記録にも有用なところです。

また、録画データはさくらのクラウドに保存されるため、災害や人為的な設備破壊から保護されます。場所を問わずに各種カメラや録画映像にアクセスでき、遠隔管理、複数拠点の管理に利用です。
 多様なニーズに合わせてプランやオプションが用意されていますので、ぜひ詳細をご確認ください。

構成・執筆・編集
事業開発部

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2024年9月公開