LPWAとは?通信の仕組みや活用事例を紹介
LPWAの特徴は、省電力で広範囲通信が可能な通信方法で、IoT分野でも屋外通信で活用されているケースが多いです。通信回線の帯域は、携帯電話の多くで利用されているLTEのなどのプラチナバンドとは異なる周波数帯で通信されているため、月額通信料金を抑えることが可能です。
LPWAとは?
LPWAとは、省電力広域ネットワークと呼ばれ、LoRa、SIGFOX、NB-IoTなど様々な通信規格が存在し、少ない電力で数キロ〜数十キロの広い範囲で通信が可能な特徴を持つ通信方法のことです。通信速度は100bps〜数十kbps程度と、他の通信技術に比べると遅いですが、電池だけで年単位の長期間稼働が可能、コストが安価などの理由から、IoTの分野で多くの注目を集めている通信技術です。
LPWAの読み方と意味
LPWAはLow Power Wide Area、略で「エル・ピー・ダブリュ・エー」と読み、日本語では、"Low Power"が「省電力」、"Wide Area"が「広域エリア」といった意味となります。
IoTとLPWA
図は通信規模と代表的な通信規格の名称が関係したものです。IoTのセンサー通信ではLPWAが活用されており、省電力ながらも長距離通信が可能で、3Gや4G(LTE)とは異なり通信料や通信量が抑えられる通信規格が多く用いられております。
上図の緑色の領域は主なLPWA通信の範囲です。図のように低用量で低速度であればデバイスの消費電力は少なくなります。「低容量かつ低速度で低消費電力」の3低が要件のLPWAは、特に野外(僻地)に設置している通信デバイスの通信で利用されます。
LPWA通信の仕組み
IoTの普及と共に、様々なLPWAの規格が出現しています。それぞれに周波数帯、通信距離、省電力性、通信速度などに特徴がありますが、ネットワーク構築にも差があります。LoRaやWi-SUNの場合、ゲートウェイからサーバーまでを自社で用意する必要があるため、自由な構成が組める代わりにコストの負担が発生します。SIGFOXでは基地局からクラウドサーバーまでを京セラコミニュケーションズ社が提供しているため、簡単に利用できる代わりに構成に一定の制限があります。NB-IoTでは携帯事業者の既存の基地局を利用するため、広い通信範囲で通信ができますが、通信に対する費用が発生します。IoTシステム構築の際は、それぞれのメリットとトータルコストを検討して、最適な構成を考案する必要があります。
LPWAの種類(セルラー系と非セルラー系)
LPWAは「セルラー系」と「非セルラー系」に大別されます。「セルラー系」は通信事業者が提供する無線(LTEの応用技)であり、総務省からの無線局免許が必須です。対して「非セルラー系」は免許不要であるため、個人や企業が無線を自由に運用できます。セルラー系の「NB-IoT」は「LTE-M」の省電力化をさらに推し進めた無線通信技術です。「単3電池2本で概ね10年程度の電池寿命」を実現できるほどの省電力ですが、「LTE-M」より通信速度は遅くなっています。一方で非セルラー系は特色で、従来の無線通信技術は通信事業者の独壇場だったのに対して、「LoRaWAN」や「SIGFOX」は個人や企業が自由に無線電波を飛ばせますが、通信モジュールは「技適」をパスする必要があります。
セルラー系 | 非セルラー系 |
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免許が必要な周波数帯(ライセンスバンド)であるLTE帯域を使う | 免許が不要な周波数帯(アンライセンスバンド)である「サブGHz帯」(920MHz帯)を使う |
LPWA通信方式と回線の周波数
無線装置では「電波(電気エネルギーの波)」によって情報を伝達しています。元が電気エネルギーのため、金属では反射し、水分には吸収される性質を持ちます。電波の単位は、1秒間に発生する波の数を「周波数」と呼び、Hz(ヘルツ)で記載されます。例えば1秒間に5回上下の波が起こると5Hzとなり、1KHz(キロヘルツ)は1,000Hz、1MHz(メガヘルツ)は1,000KHz、1GHz(ギガヘルツ)は1,000MHzとなります。LPWAの通信方式と周波数の関係も通信方法によって数値に変化があり、通信速度も変わります。
LPWA活用事例
LPWAの活用例は、山林や河川の監視に伴う設備管理で活用する場合、広範囲でIoTネットワークを構築するため、Bluetoothなどの技術では通信距離が短く、多くの中継機器が必要になります。また、3G/4Gなどの携帯回線では広域をカバーすることはできますが、通信利用が発生する点や通信モジュールが高コストである点や、消費電力が大きい点が懸念点となります。このようにLPWAは電力消費が難しい屋外や地下などに携帯回線が届かない場所で、広域にわたって通信を行う場合に適しています。当社では、北海道石狩市とIoT技術を軸とした防災や地域活性化に向けての包括協定を結び取り組んでいます。過去に「北海道胆振東部地震」の際、地震・大停電が発生し、それによって得られたモノからの情報をまとめております。詳しくは「大停電から見えてきたモノのデータの有用性」をご覧ください。
LPWAモジュールと機器
当社が提供しているIoTサービスの「さくらのセキュアモバイルコネクト(セキュモバ)」は、IoT SIMを提供しています。IoT SIMはLPWA通信が可能な機器を動作確認デバイス一覧としてセキュモバサイトでご紹介しております。
LPWA通信規格の比較
LPWAの通信規格はLoRa、SIGFOX、NB-IoTなど様々な種類が存在します。それぞれに周波数帯、通信距離、省電力性、通信速度などに特徴がありますが、ネットワーク構築も異なります。オンプレミス型のLo-Ra、Wi-SUNなどはゲートウェイからサーバーまでの自社で用意する必要があるため、自由な構成が組める代わりに、初期コストが高額になります。一方でSIGFOXはクラウド環境を利用、NB-IoTは携帯電話網を利用するため、初期構築費用は抑えることができますが、月額利用料を支払う必要があるため、トータルコストは高額になります。
LoRa
LoRa(読み方:ローラ)は、低消費電力で長距離通信ができる通信方式の規格です。LoRa Allianceによって仕様策定された、LoRaを使用したオープンな無線ネットワークのことをLoRaWANといいます。サブギガ帯とも呼ばれる920MHz帯の周波数を使用し、利用時に免許申請が不要の特定省電力無線に該当します。LoRa Allianceには世界中のIoT事業者が登録していますが、国によって使用する周波数帯がことなるため注意が必要です。また最大通信速度は50Kbps程度で、双方向通信が可能な点にも特徴があります。LoRaでは、ゲートウェイをユーザが用意し、自由にネットワークを構築できるため、携帯電話やSIGFOXなどの基地局の電波が届かない山奥や地下などでもネットワーク構築ができます。
Wi-SUN
Wi-SUN(読み方:ワイサン)は、Wireless Smart Utility Networkの略で、Wi-SUN Alliandeによって仕様策定された規格です。日本では920MHz帯の周波数を使用し、最大通信速度は200Kbps程度です。スマートホーム向けのECHONET Liteで利用することが可能で、スマートメーター(次世代電力量計)と家庭内の通信(Bルート)に採用されています。
SIGFOX
SIGFOX(読み方:シグフォックス)はフランスのSIGFOX社によって仕様策定された通信規格となり、世界で70カ国(2020年1月現在)に広がっています。LoRaと同様の920MHz帯を使用し、世界でも共通した周波数帯を使用しています。最大通信速度は250Kbps程度となります。SIGFOXは国ごとに提供する通信事業者を1社に絞り、日本では京セラコミュニケーションシステム社が回線提供のサービスを行っています。そのため通信に必要な基地局はユーザ側で用意する必要はなく、京セラコミュニケーションシステムズ社が構築したネットワークを利用することができます。
NB-IoT
NB-IoT(読み方:エヌビー・アイ・オー・ティ)は、2016年にLTE標準の規格策定などを行う3GPPによって仕様策定された規格です。携帯電話と同様の周波数帯(180KHz)を使用し、携帯事業者の既存の基地局を利用することができます。NB-IoTはセルラー系と呼ばれており、最大通信速度は50Kbps程度となります。
まとめ
最後にLPWAについてまとめます。
- LPWAは省電力で広範囲通信が可能
- LPWAはセルラー系と非セルラー系に分かれる
- LPWAの周波数帯はISMバンドと呼ばれ主に「920MHz帯(サブGHz帯)」が用いられる
- LPWAの通信規格にはオンプレミス系の「LoRa」「Wi-SUN」、クラウド系の「SIGFOX」「NB-IoT」などが存在する
IoT通信とモバイルネットワーク
このようにLPWAなどを利用し、IoT通信の際にはモバイルネットワークを活用することが効果的です。具体的にIoTデバイスが通信するときの特徴や、MNO事業者(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)やMVNO事業者(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)が提供するモバイルネットワーク通信の仕組みを解説します。
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