さくらのセキュアモバイルコネクト

IoT医療の進化、課題、そして未来

IoTは医療業界においても大きな変革をもたらしています。第4次産業革命を背景としたIoTが医療業界に与える影響や課題をもとに、IoT導入において今後の医療現場がどのように変わっていくかを考察します。

IoT医療とは?

IoT医療とは様々なモノがインターネットに接続する技術を用いた医療のことです。医療4.0の観点では医療との接点が医療機関以外にも広がる「多角化」、個人個人に応じたオーダーメード化が進む「個別化」、そして医療の主体が患者自身に変わっていく「主体化」が特徴です。従ってIoTで多角化、個別化、主体化を実現できることとしては、モノとインターネットを活用した医療で患者の「治療」だけではなく、健康な私たちにも「予防」という観点でも多くの人たちに提供できる医療が広がると考えることができます。また、これからの医療は今まで培ってきた医療から更に進んだ、第4次産業革命時代の様々な革新的科学技術により台頭するのが「医療4.0」と呼ばれているものでIoTやAI、ビッグデータやクラウドなどとの関連性も重要になってきます。

第4次産業革命との関連性

医療では大きく2つの変化があると考えられています。一つはオーダーメード化が進むことです。消費者は従来、大量生産された品物の中から自分好みの品物を選ぶ受け身の姿勢を取ってきました。第4次産業革命では、消費者自身が最初から自分好みのサービスを受けることが可能になります。医療業界に限らず消費者のニーズに応じてサービスがオーダーメード化されてきますので、健康と医療のサービスであるスマートヘルスで、人々の個別に応じた医療・福祉サービスの質の向上や、患者や利用者のQOL(生活の質)の向上を目指すために、予防医療の促進、医療の効率化・高度化、患者の主体性の向上を目的にして取り組むようなサービスに変化していきます。もう一つは新たな付加価値が提供されるサービスが出現するようになることです。今までは商品を売った時点で多くのビジネスが終わっていましたが、IoTを活用してアフターサービスにつなげる方向に変わっていきます。少子高齢化社会が顕在化している日本においても、第4次産業革命に関する技術を活用し、健康長寿社会の形成や経済成長につなげることが求められています。

5G時代のIoT医療とその展望

IoT、AI、ビッグデータ、ロボティクスは代表的な技術として医療分野でも進化するものです。時期を同じくしてVR、AR、MR、や次世代の高速携帯通信規格の5G、ブロックチェーン、BMI、などの新たな技術革新も進んでいます。5Gとは、高速大容量、低遅延、多数接続を実現した通信技術です。高画質な動画や映像のリアルタイム配信、大容量データのダウンロード、自動運転、遠隔医療、IoTなど様々な分野で活用できる重要な技術として、さらなる技術革新をもたらすと考えられています。以下に代表的な技術と説明をまとめました。

名称 説明
IoT
(Internet of Things)
家電や車、衣類、建物など、身の周りの様々なモノがインターネットにつながること。これまで測定されず埋もれていた様々なデータ収集・分析し、連携させることができる。
人工知能
(AI:Artificial Intelligence)
人間の頭脳が行う知的な作業をコンピュータで模索したソフトウェアのこと。深層学習(ディープラーニング)によりコンピュータ自身が情報を自動的に学べるようになった。画像や文章、音声などの認識や、物事の予測、最適化やなどに活用される。
ビッグデータ 役立つ知見を導出するために蓄積された膨大なデジタルデータの集まりのこと。
ロボティクス ロボット工学のこと。ロボットの設計・製作・制御だけではなく、ロボットに関連した科学研究全般を示すこともある。自動化や人の運動や感覚の拡張として利用される。
VR
(Virtual Reality:仮想現実)
CGや動画で作った映像の世界(仮想現実)に実際に入り込んだかのような体験ができる技術。
AR
(Augmented Reality:拡張現実)
現実の世界に仮想の世界やデジタル情報を重ねて「拡張」する技術。3D映像などの現実の風景と重ねて投影する。
MR
(Mixed Reality:複合現実)
目の前の空間に様々な情報を3Dで表示して、自由な角度から見たり、複数人で情報共有できる技術。
5G 4Gに続く次世代の高速通信規格。超高速だけではなく多数接続やタイムラグがなくなる超低遅延を実現する技術。
ブロックチェーン
(分散型台帳)
参加者全員がインターネット上でデータを持ち合うデジタルデータの記録帳。データの書き換えや改ざんが困難かつ検証が容易。
BMI
(Brain-Machine-Interface)
脳から情報を感知してコンピュータやロボットを動かすこと。BCI(Brain-Compuer-Interface)とも言う。

医療現場におけるIoTの活用

医療現場の長時間労働の問題が根本的には解決されないため遠隔医療(オンライン診療)の導入が始まっています。オンライン診療とは医療機関で医師の診療を受ける際と同様、リアルタイムの映像と音声の通信でオンライン上で診療を受けることです。オンライン診療は医師の負担も軽減することができます。具体的には、長時間勤務の課題にも医師の勤務時間や勤務場所を柔軟に調整できる点や、患者の受診集中を緩和し医師の勤務時間を平準化できること、また医師の在宅勤務や遠隔勤務を可能にし医師の労働環境の改善が可能であること、そして医師の業務効率化を図り、医師の負担を軽減できることなどが挙げられます。
患者の観点では次のようなメリットがあります。通院して医師の診断を受けるなど定期診断のような患者であれば、オンライン診療で服薬指導や、ウェアラブルデバイスで計測した血圧や脈拍、歩数などのデータを共有しながら診察を行うこともできます。遠方で通院が困難な患者でも自身が持っているスマートフォンやパソコンを使って誰でも受診することが可能です。

病院のIoT利用事例

病院でのIoT利用事例は大きく3つの分野に分類されます。1つ目は「患者のケアと診療」です。ウェアラブルデバイスの活用で患者の体温や脈拍数などをリアルタイムでモニタリングし、遠隔医療で患者の状態を遠隔地から診察したりすることができます。2つ目は「病院の運営」です。IoTセンサーを活用することで病院内の設備の稼働状況や故障状況をリアルタイムで把握することができます。故障を未然に防止したり、修理の効率化に繋げたりすることができます。また薬剤の管理もIoTタグを活用することで在庫状況や使用状況をリアルタイムで把握することが可能となり、在庫切れや適切な使用を促進することができます。またIoTを活用することで病棟内の監視カメラなどから患者の位置や状態をリアルタイムで把握することが可能となり、医療スタッフの配置を効率化したり、患者の転倒防止につながることができます。医療スタッフや医師の長時間労働防止にもIoTを活用し、勤怠時刻の管理の精度を上げることや、遠隔医療を活用し医師の過労防止につながる施策もIoTを活用して実施できることです。3つ目は「研究開発」の分野です。患者の遺伝子情報の解析から新たな治療法の開発や、病気に対する今後の予測などに役立てる事ができます。医療機器の開発でもIoTは活用されており、いままでより高精度な医療機器を開発することが可能となり、患者の治療や診断の精度向上にもつなげることができます。

スマートホスピタルの現状とその利点

スマートホスピタルとは、ITやIoTなどのデジタル技術を活用して、医療の質の向上、医療の効率化、医療従事者の働き方改革、患者の利便性向上などを実現する次世代型の病院です。現状のスマートホスピタルはまだ発展途上と言えますが、近年では政府や企業の取り組みにより、多方面で導入が進みつつあります。病院のIoT利用事例でも取り上げた内容ですが、患者のケアと診療の精度向上、病院の運営効率化、研究開発の推進の分野で利点があります。スマートホスピタル導入により、医療の質の向上、効率化、医療従事者の働き方改革、患者の利便性向上などの実現が期待できます。

EHRクラウドデータを活用したスマートホスピタルの例
EHRクラウドデータを活用したスマートホスピタルの例

EHRクラウドの導入で医療介護機関同士が連携し、人々はどこにに住んでいても切れ目のない医療や介護サービスを受けられるようになります。EHRとは電子健康記録のことで、患者の情報をデジタルデータとして保存し、医療機関同士連携することを「地域医療連携ネットワーク」と呼び、地域全体で住民の健康を守る仕組みとなっています。複数の医療・介護機関で距離や時間帯の制約なく患者の正確な診療状況が把握できると、関係者間のコミュニケーションが増え、紹介や逆紹介、転院、救急搬送時の連携が円滑に進むなど、切れ目ない医療や介護サービスの提供につながる効果があると考えられます。

IoT通信サービスを詳しく知りたい方へ

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医療システムを構成している背景にはIoTネットワークが必要です。将来IoTサービスを実現するために不可欠なIoTに特化した通信サービスである「さくらのセキュアモバイルコネクト」をご紹介します。

医療とヘルスケアの関係

ヘルスケア業界は、少子高齢化が進む背景から要介護者の急増と不足する介護人材により、高齢者の日常生活を助けてもらうことが困難になると予測されます。医師が都市部に集中してしまうことで、地域医療で医師不足の問題が発生し、患者が十分な医療を受けられなく人々の生命を脅かす重要な問題にも直面します。また、少子高齢化が進むと社会保障費の急騰により、労働者の社会保険費用が高額になり、十分な社会保障を受けられない恐れもあります。継続的な社会保障制度の改革が求められると同時に、医療・介護といった公的サービスを質は維持しながらも、効率的に運営していくための方法が検討される必要があります。スマートヘルスはこれらの社会問題を解決できる手段の一つとして注目されています。

スマートヘルスとは?

スマートヘルスとは、ICT(情報通信技術)を活用したヘルスケアのことであり、医療・福祉サービスの質の向上や、患者や利用者のQOL(生活の質)の向上を目指すものです。具体的にはウェアラブルデバイスや遠隔治療、AI(人工知能)を活用して、予防医療の促進、医療の効率化・高度化、患者の主体性の向上を目的にして取り組むことです。ヘルスケア(Healthcare:健康管理)とは、狭義の意味で医療や医薬分野の機器やサービスのことです。広義の意味では健康や体調管理といった医療行為以外の要素が含まれます。日本では少子高齢化が進行し超高齢化社会となり、高齢者の健康管理や医療、医薬に関する事業環境を中心に大きく変化しています。企業が取り組む「デジタルトランスフォーメーション(DX)」では、その先に存在するデジタライゼーションに取り組むと同時に、異業種のITプラットフォーマーとヘルスケア事業との関連性が深まっていくことも予測されます。また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、人々の健康管理への関心が高まる中、ヘルスケア事業の役割は一層重要な存在になっています。

スマートヘルスがもたらす医療・健康へのメリット

スマートヘルスは様々なメリットが生み出され、ICTの活用により今まで取り組めていなかった分野にも踏み込めるようになり、新しい医療サービスが誕生すると期待されています。

メリット 具体的に期待できること
予防医療の促進 ウェアラブルデバイスなどの活用により、健康状態を継続的にモニタリングすることで、病気の早期発見・予防につなげることができる。
医療の効率化・高度化 遠隔医療やAIなどの活用により、医療の効率化・高度化が進み、医療費の削減や医療の質の向上につながる。
患者の主体性の向上 ウェアラブルデバイスやオンライン診療などの活用により、患者は自分の健康状態を自ら管理しやすくなり、主体的に健康づくりに取り組むことができる。

このようなメリットからリモートで提供する医療が実現したあとの可能性を考察します。規制緩和で医療をリモートで提供するようになると、リモート化が先行する非医療の分野と繋がる可能性があります。生命に関わる行為は以前と変わらず規制の対象になりますが、分野によっては医療と非医療の境目が曖昧になり両分野の連携が不可欠になります。具体的には次の2つのキーワードをもとにサービスが変わっていくことが考えられます。一つは「ジャストインタイム」で必要なときに必要なものが適切な方法で需要側に届けられるという概念です。例えばオンライン診療、服薬指導とドローンによる医薬品配送の組み合わせサービスにより、症状が軽い場合や遠方から通院が困難な場合でも、治療がリモートで完結できます。更には医師や薬剤師がフィットネス・トレーナーに代わり、医薬品が健康器具に代われば、医療行為以外にも応用できることになります。予防・治療・回復とその前後の各フェーズで、適切なサービスを全てリモートで受けることも可能になるかもしれません。もう一つは「パーソナライズ」で、技術革新によりデータがより細かくリアルタイムで取得されることで、ユーザにベストフィットするサービスを提供できるようになるというオーダーメード化が進むことです。ヘルスケア領域においてもリモートを前提としたパーソナライズサービスが出てきつつあります。

ヘルスケアのスマートデバイス

IoTは身の回りのあらゆる「モノ」がインターネットに接続されることにより、情報を交換したり他のシステムと連携したりすることが可能となる仕組みのことで、一般的にモノのインターネットの意味です。例えば、家電をスマートスピーカーに搭載されたAIアシスタントを使って声で操作ができます。AIやIoTを利用した技術進歩はヘルスケア分野でもイノベーションを起こし様々な製品やサービスの形となって私たちの社会の中にスマートヘルスとして浸透し始めています。腕時計タイプのウェアラブルデバイスであるApple Watchを例に説明をします。時計としての機能だけではなく、サイクリングやヨガ、水泳、ランニングなどの運動時の状況を測定することができ、健康をサポートする様々な機能をもっています。例えば心拍数のモニタリングでは、通常よりも高い心拍数と低い心拍数を検知するとアラート表示し、本人に自覚症状がなくても異常を知ることができます。また、日本では医療機器としての認可が降りていないためまだ非対応ですが、心電図(ECG、Electrocardiogram)を測定する機能もあり、心筋梗塞などの早期発見にもつながっています。米国では、全く自覚症状がなかった利用者がApple Watchからの警告によって病院に行ったことで、重篤な症状に陥ることを防げ、命をとりとめた例がいくつも報告されています。

AIとスマートヘルス

スマートヘルスを推進するにおいてAIの活用が注目されています。IoTの技術でモノからデータを収集し、蓄積されたデータを解析する際に利用されるのがAIです。解析されたデータはある規則性を持ったデータに変わり人間やコンピュータが利用しやすくなることが特徴です。さらにAIはディープラーニング(人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法のひとつ)でコンピュータ自身が学び続けていくので、より良い結果を導くように提案をしてくれるようにもなります。AIとIoTの活用でさらにスマートヘルスの精度が向上することが期待できます。

健康管理や医療分野でのAIの活用例

AIを活用したヘルスケアでは食生活の栄養管理やオーダーメードサプリメントの組み合わせ販売によって人々の健康を促進するサービスが存在します。スマートフォンで生活習慣や栄養状態などの質問に答えることで、サプリメントや自宅で調理ができる食材や既に調理されている冷凍食品などが届けられるサービスも存在します。
またオンライン診療と組み合わせたものも存在し、糖尿病患者などの生活習慣病への効果的な指導・管理や、血圧・血糖などの遠隔モニタリングを活用した早期の重症化予防など、対面診療と遠隔診療を適切に組み合わせることにより効果的・効率的な医療を提供するサービスも存在します。
医療分野でも疾患の早期発見や病変の見落とし防止のためにAIが利用されており主にMRIやCTから投影画像の画像解析で診断する機会も増えています。AIによる画像診断支援を進めていくためにはAIが学習するための大量のデータが必要になります。日本医療研究開発機構(AMED)の研究開発事業「医療画像ビッグデータクラウド基盤」では、日本病理学会や日本医学放射線学会など、診療画像に関係する6学会と国立情報学研究所(NII)の共同開発で、診療画像の大規模データベース構築、AI開発のための共通プラットフォーム構築など持続可能なAI開発へ向けた研究が行われています。

ライフスタイルの改善

スマートヘルスは、ウェアラブルデバイス、モバイルアプリ、医療機器などのテクノロジーを活用して、人々の健康とウェルネス(従来のヘルスと区別する目的で提唱される、より良く生きようとする生活態度)を向上させる方法です。スマートヘルスは、ライフスタイルの改善にさまざまな方法で役立ちます。ウェアラブルデバイスは、心拍数、歩数、睡眠の質など、さまざまな健康データを追跡できます。このデータは、人々が自分の健康状態をよりよく理解し、目標を達成するのに役立ちます。スマートヘルスは、医療費の削減にも役立ちます。ウェアラブルデバイスは、心拍数、歩数、睡眠の質など、さまざまな健康データを追跡できます。このデータは、人々が自分の健康状態をよりよく理解し、目標を達成するのに役立ちます。スマートヘルスは、医療費の削減にも役立ちます。ウェアラブルデバイスは、早期発見と予防に役立ちます。これにより、人々は病気になる前に治療を受けることができます。これは、医療費の削減につながり、さらには日々の健康に対する意識も高まるでしょう。

スマートヘルスと社会の未来

スマートヘルスは、社会のさまざまな側面に大きな影響を与える可能性があります。具体的には、健康とウェルネスの向上、医療の効率化、新しい産業の創出などで社会が変化する可能性があります。例えば「遠隔医療の普及」ではウェアラブルデバイスやモバイルアプリを活用した遠隔医療が普及し、患者は自宅や職場からでも医師の診察を受けることができます。これにより、患者の利便性が向上し、医療のアクセス性が拡大することが期待できます。「パーソナライズされた医療の実現」では、データを活用することで、患者の個々のニーズに合わせたパーソナライズされた医療を実現することができます。これにより、治療の精度や効果が向上し、患者のQOLの向上につながります。「介護の効率化」では介護スタッフは、患者の健康状態をリアルタイムで把握し、適切なケアを提供することができます。これにより、介護の質の向上や介護スタッフの負担軽減につながります。このようにスマートヘルスは、これからの私たちの生活をより豊かで健康なものにしてくれるでしょう。

データ取得と利用によるスマートヘルスの推進

ヘルスケアや医療分野で取得するデータには主に3種類存在します。EHR、HIE、PHRを連携した大規模プラットフォームができれば、今まで以上の高度な医療サービスが提供できるとともに、私たちの健康管理も便利になるでしょう。

名称 説明
EHR
(Electronic Health Record)
電子健康記録:電子カルテのこと
HIE
(Health Information Exchange)
電子健康記録:医療機関同士連携をして患者の健康情報を共有するシステム基盤
PHR
(Personal Health Record)
個人健康情報管理:個人の医療・介護・健康データ。データをアップロードすることで、医師などの医療従事者にデータを見てもらうなどの双方向のやり取りが可能

EHRは簡単に言うと電子カルテのことで紙に書いているカルテよりも電子化が進んでいる医療機関が増えており、患者の病歴や治療歴などを各医療機関が継続的に記録することが必要です。HIEは医療機関同士連携をして患者の健康情報を共有するシステム基盤です。大規模な医療介護プラットフォームが構築されれば、患者は通院する病院が変わっても医療・介護機関の情報共有により円滑に診断が可能となりより高度な医療サービスを提供できることが期待できます。PHRは個人の医療・介護・健康データを本人が閲覧できるだけではなく、本人が収集した血糖値や体重などのデータをアップロードすることで、医師などの医療従事者にデータを見てもらうなどの双方向のやり取りが可能です。EHR、HIE、PHRを連携した大規模プラットフォームができれば、今まで以上の高度な医療サービスが提供できるとともに、私たちの健康管理も便利になるでしょう。

連携基盤の考え方

ヘルスケアに関係するPHRデータをもとに公的な医療データベースの構築例を説明します。BtoBでは医療・介護事業者と創薬・医療機器企業の水平共有をもとに医療機器や薬品の共同開発が期待できます。BtoCでは国民(消費者)と健康・保険事業者が個別最適化した健康・保険サービスの提供でサービスのパーソナライズ化が進むでしょう。また医療・介護事業者と創薬・医療機器企業の研究開発をもとに個別最適化した医療・介護サービスの提供が期待できます。データの垂直共有水平共有が進めば連携基盤などで基本的な情報のみを管理し、それ以外の必要な情報はマイナンバーや健康保険証番号を基点に既存の様々なデータベースから必要な時に連携をして取得することで、利便性が向上することが期待できます。

公的医療データベース
出典:患者+医師だからこそ見えた デジタル医療 現在の実力と未来 日経BP社

このように公的機関を通じて提供するクラウドサービスをガバメントクラウドと呼びます。ガバメントクラウドとはデジタル庁が行っている政策の一つで、政府共通のクラウドサービスの利用環境です。クラウドサービスの利点を最大限に活用することで、迅速、柔軟、かつセキュアでコスト効率の高いシステムを構築可能とすることを目的としています。利用者にとって利便性の高いサービスをいち早く提供し改善していくことを目指しており、地方公共団体でも同様の利点を享受できるようにデジタル庁が検討を進めています。
2024年現在ガバメントクラウドの対象サービスは主に海外のメガクラウドですが、2023年度には選定要件を一部変更、緩和した形で公募が行われました。これにより、ガバメントクラウドの対象サービスに国内企業が採択される可能性も浮上し、デジタル庁が進める「ガバメントクラウド整備事業に係る検証作業等」において当社が提供する「さくらのクラウド」が対象となりました。本認定は、2025年度末までに技術要件をすべて満たすことを前提とした条件付きの認定です。今後は、主たるクラウド環境として「さくらのクラウド」の開発強化に加え、周辺機能の一部はマイクロソフト社の製品等のサードパーティ製品を用いて開発を行い、2025年度中にガバメントクラウドとしての提供を目指します。

ライフサイエンスとデジタル技術融合によるQOL向上

少子高齢化社会において、今後は医療費高額化と健康格差拡大への対応が必要になることも予測されており、未来の医療は健康・医療・介護の分野で連携をしてヘルスケアサービスが人々のQOL(生活の質)の向上にどれほど見合っているのか、客観的な効果指標の測定を通じた費用対効果の実施が一般的になっていくことも予測できます。生活者のQOLを底上げできれば、物質的な豊かさだけではなく健康を通じて精神的な豊かさや満足度も非常に重要な意味を持ちます。

項目 説明
①生命維持からQOL重視へ 豊かな社会生活を維持するための医療・介護の推進
②治療から予防へ 日常の健康管理を通じた発病や重症化の回避
③分散から連携へ 健康・医療・介護データの連携を通じたより精細な予防・診断・治療の提供
④効果に基づく管理・評価 客観的な効果指標の測定を通じた表対効果の実施
ライフサイエンスとデジタル技術融合によるQOL向上

出典:変貌するヘルスケア業界 -あらゆる企業がヘルスケア事業者に- 日本医療企画
(「未来社会構想2050」MRI政策・経済研究センター2019年)

このように生活者のライフデザイン&サポートと再定義されるヘルスケアにおいては、患者の病気の治療だけではなく、健康体の人も含めた全ての生活者のQOLの向上が目指されていくことが期待できます。医療とヘルスケアがより連携を深めれば「治療から予防へ」のシフトチェンジが加速されていくでしょう。

医療業界でIoT導入を検討中の方へ

IoT通信におけるSIMの活用法方法

医療業界で利用されているシステムにもIoTネットワークは必要です。医療におけるIoT導入の現状をもとに、導入メリットや活用事例、導入時に確認するべきことをご紹介します。

生成AI向けクラウドサービス開始に向けて

さくらインターネットは経済安全保障推進法に基づく特定重要物資である「クラウドプログラム」の供給確保計画に関する経済産業省の認定を受けました。
AI時代を支えるGPUクラウドサービスの提供に向けて、3年間で130億円規模の投資をし「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を搭載した、
合計2EFLOPS(エクサフロップス)の大規模クラウドインフラを整備することを決定しました。
さくらインターネットは今後も「『やりたいこと』を『できる』に変える」という企業理念のもと、
IoTとAI技術の可能性を追求し、新たなサービスの提供に挑戦していきます。

商号
さくらインターネット株式会社 (SAKURA internet Inc.)
代表取締役社長
田中 邦裕
所在地
  • 本社
    大阪府大阪市北区大深町6-38 グラングリーン大阪 北館 JAM BASE 3F
  • 東京支社
    東京都新宿区西新宿7-20-1住友不動産西新宿ビル 32F
  • 福岡オフィス
    福岡県福岡市中央区赤坂1-12-15 赤坂門プライムビル 7F
  • SAKURA innobase Okinawa
    沖縄県那覇市松山1丁目2番13号 長谷工那覇ビル1F
設立
1999年8月17日
上場証券取引所
東京証券取引所プライム市場(証券コード:3778)
資本金
112億8,316万円
従業員数
連結 755名 (2023年3月末)
主要事業
クラウドコンピューティングサービスなどの提供、IoT関連事業
データセンター運営
さくらのセキュアモバイルコネクト

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