さくらのIoT

IoT通信はパソコンやスマホを使ったインターネット通信とは大きく異なります。IoTはバッテリー1つで屋外での稼働を数年間要求されることもあるので、デバイスの消費電力を最小限に抑える要件が重要です。また、IoT通信を活用するためには、半導体などのハードウェアの知識やプロトタイプ開発、その後サービス化したときの運用と開発との連携も重要なポイントになります。IoT通信も様々な形態があり電力が十分に確保された状態で通信する場合もありますが、当社では特にバッテリー稼働するデバイスが通信することをIoT通信と定めています。この記事では、IoT通信の方式や規格、通信モジュールや料金について説明します。

IoT通信の仕組み

IoT通信(IoTネットワーク)の特徴ですが、一般的なインターネット通信と大きく異なる点があります。相違点は「データの流れ方」で、インターネット通信とは正反対と言っても良いくらいに異なっています。

IoT通信とは?

IoT通信とは、ネットワーク上に微小なデータが発散的に流れることです。IoTネットワークの要件として特徴的な項目は、デバイスの制約(前提条件)である「膨大な台数」「野外(僻地)での稼働」「リアルタイム性の追求」に依存しています。
一般的なインターネット通信は巨大なデータの塊がネットワーク線上を延々と流れる続けることから、「滝」と例えられますが、IoT通信は微小なデータがネットワーク上に発散的に流れてくることから「データの豆鉄砲」といえます。IoTデバイスはセンサー計測値のような微小なデータを扱うことが多く、IoTデバイスは野外で稼働することが大きくバッテリー駆動(ソーラー駆動も含む)せざるを得ないため、消費電力を最小限に抑える必要があります。
「データの滝」を扱う仕組みでは「データの豆鉄砲」をうまく扱うことができません。「データの豆鉄砲」であるIoT通信を効率的に処理するために「IoTネットワーク」が登場しました。

インターネット通信ととIoT通信の違い

IoT通信プロトコル

IoTプロトコルは多くのデバイスからデータを収集し、効率よく大量のデータを送受信する必要があります。その際はインターネット通信として多く使われているHTTPが一般的です。IoTでは多くのセンサーから少量のデータを、短時間に何回も送受信する必要があるので、通信手続きが簡略化されシンプルなメッセージの送受信を行う「MQTT(Message Queuing Telemetry Transport)」も利用されています。その他は「AMQP(Advanced Message Queuing Protocol)」や、HTTPをもとに軽量化され、デバイス間での利用も込まれている「CoAP(Constrained Application Protcol)」、効率的にサーバーと双方向通信を行う「WebSocket」など、多くの通信プロトコルが存在します。また、これらのプロトコルは合わせてTLS/SSLにより暗号化される場合もあります。

IoT通信方式と規格

IoT通信方式(IoTネットワーク)の種類について説明します。IoTネットワークの性能を示す次元として「通信速度」「通信距離」の2軸で整理する必要があります。実際には「消費電力」も考慮するべきですが消費電力は通信速度や通信距離と概ね正比例します。即ち通信速度や通信距離が大きいほど消費電力は大きくなります。一見すると通信速度と通信距離の両方に優れた「5G」や「LTE」が最良の選択肢のように思えますが、5GやLTEは消費電力や通信費用も大きいため、IoTシステム(IoTデバイス)の運用形態によっては5GやLTEを利用できない場合が考えられます。「通信速度」「通信距離」「消費電力」「通信費用」の諸元はトレードオフの関係性となっています。

IoT通信(ネットワーク)の使い分け

いかなる用途にも万能なネットワークは存在しないため、IoT通信(ネットワーク)でも適切に通信方法を使い分ける必要が出てきます。使い分けを判断する基準(目安)があり、大まかな基準は図の通りのフローチャートを辿ると見えてきます。IoTデバイスは主に以下の要件に沿った運用が多いため、IoTネットワークには「LPWA」が適しています。

IoT通信のフローチャート

5GのIoT通信

インターネット接続で大容量(高速)通信をする場合に5G通信が必要になりますが、2023年2月現在では代表的に実用化されているような高速かつ大容量通信を用いたIoTサービスはまだ存在はしておりません。日本で実現するためには5G普及の前提条件として5Gサービスエリアの拡大が必要です。例えば人口が密集している大都市圏では普及していますが、「5Gが過疎地でも利用できる」といったレベルでサービスエリアの広さが求められます。そのためには通信事業者が「スモールセル(狭いエリア内で携帯端末を携帯通信網に接続する小出力の基地局)」を大量に建設する必要があります。そのため長い年月を要するのは確実で、多大な費用も要するため通信事業者が負担しきれるかということも懸念点となります。

IoT通信モジュール

IoT通信モジュールとは、半導体などの基板の形状をしている通信機器のことです。製品に組み込むことで、位置情報や機器の稼働状況がわかる小型の通信端末です。IoT通信モジュールはLTE通信の場合に「LTEモジュール」とも呼ばれ「センサモジュール」と通信をします。センサモジュールはIoTデバイスに組み込み、主に人間いうところの”五感”を担う装置として利用されます。具体的な利用例として、当社のエンジニアが「温湿度センサ」「照度センサ」を利用し「LTEモジュール」と「さくらのクラウド」の双方向通信を実現した開発サンプルを作成しましたのでご覧ください。

開発サンプルの概要図

開発キット

当社のIoTサービスである「さくらのIoT」の「さくらのモノプラットフォーム」では、「開発キット」として検証のLTEモジュールを提供しています。LTEモジュールは以下のような写真の通信モジュール基板を無償提供しています。設計情報は公開しており、必要に応じて製造いただくことも可能です。なお、当社からの提供はあくまで検証用として行うものであり、組込用途での大量提供および継続的な供給は行いません。

開発キットの組み立てサンプル
開発キットの組み立てサンプル
開発キットの組み立てサンプル

IoT通信の動作確認済みデバイス一覧

IoTでは通信機器を通じてインターネット接続を実現しています。「さくらのセキュアモバイルコネクト」のSIMカードでは、様々なルーターなどのデバイスで動作することを確認しています。

IoTサービスの通信料金

IoTは大きな可能性があり、意外と参入しやすい分野だと思われてますが、現状多くの企業が一歩踏み出せていません。その理由は、参入すれば必ず成功するという確証がないためです。一方で世界では新しいIoT製品やサービスが続々と登場し、話題になっていることも事実です。どの分野のビジネスでも重要ですが、IoTに関して知識レベルではなく、理解をするために体験することも重要です。
IoTを体験するために、初期コストも安価で小規模から気軽に始められるIoTサービスで試験的にIoTを導入し、メリットや可能性を実感することは一つの手でしょう。その場合の通信は、「デバイス(センサーが搭載されているマイコンボードなど)」「ゲートウェイ(ネットワーク機器)」「サーバー(クラウド環境)」で構成されており、サーバーとつながる「クライアント(スマホアプリで操作する場合はスマホなど)」も必要ですので、4つの要素に着目をして調達するとよいです。
当社ではIoT通信に関係するサービス「さくらのセキュアモバイルコネクト」とIoT開発プラットフォームに関係するサービス「さくらのモノプラットフォーム」を提供しています。調達が難しい通信や、開発を楽にするプラットフォーム機能を安価でご利用可能です。気軽にはじめやすく、やめやすいIoTサービスとなっています。

IoTの通信料金

既に既存サービスが存在し細く設計を見直す場面などでは、自由度の高い設計が可能になり維持費用も低いので大規模サービスにも適しています。当社が提供しているIoTサービスの「さくらのセキュアモバイルコネクト」は、高セキュアな閉域型ネットワークを提供するIoT向けモバイルネットワークサービスです。ネットワーク通信速度制限を設けず、非常に安価で快適な通信を実現しました。

セキュアモバイルコネクトの料金概要図 セキュアモバイルコネクトの料金概要図
モノプラットフォームの料金概要図 モノプラットフォームの料金概要図

IoT開発における流れ

調達

IoTの仕組みは「入力のデバイス(センサー、マイコンなど含む)」「通信回線」「サーバー」が基本構成です。「出力デバイス」はIoT通信が実現した結果をどのように落とし込むかでイメージをすると良いと思われますので、初期開発の場面では調達は割愛させていただいます。

プロトタイプ開発

プロトタイピング開発とも呼ばれ、設計の早期段階から機能制限などを行った簡易版をプロトタイプ(試作)として作成し、リスクやコストを削減する手法です。発注する側は早い段階で画面設計や動作、機能を確認することができ、望んでいるものとのズレがあれば随時修正していけるため、出来上がったものが想定と大きく異なってしまった、といったリスクを軽減することができます。IoT開発でも十分に活かすことができ、不完全な状態でもまずは目に見える形にしてみて、結果を確認するといったスピード感が重要です。またプロジェクトが長期化してしまうことも開発側にも負担になるなど、場合によってはプロトタイプ開発に適しているかを見極めることも重要です。

運用と開発(リーンとDevOps)

リーン開発は、開発プロセスから徹底的に無駄を取り除くことを目的とした手法で、立てた仮設に基づいて短期間で検証・評価を繰り返すことで、より良い製品やサービスを作り上げていくことです。DevOpsは、開発チーム(Development)と運用チーム(Operations)の双方が協調することでビジネスの価値を高め、製品・サービスの開発・導入を迅速かつ柔軟に進めようという概念です。新機能追加とシステムの安定稼働の対立しがちな概念を、ビジネス価値の向上やユーザへの迅速な提供と言った共通の目的に立ち返らせるために生まれた開発手法です。無駄を排除するリーン開発と迅速な開発プロセスを可能にするDevOpsは、IoT導入には必須の開発手法と言えるでしょう。
当社のIoTサービスの「さくらのモノプラットフォーム」は、このようにIoTサービスの立ち上げを優先する場合などは、機能を利用することでスピード感のある開発の中、設計情報を利用した独自ハードウェアの設計も可能です。

IoT SIMの資料 IoT SIMの資料

まとめ

最後にIoT通信についてまとめます。

  • IoT通信におけるデータの流れは豆鉄砲のようなもの
  • IoT通信(ネットワーク)は使い分けが重要で「LPWA」が有効
  • IoT通信モジュールとは、半導体などの基板の形状をしている通信機器のこと
  • IoT通信料金は小規模であればプロトタイプ開発から取り組むことで、コストを最小限に抑えることが可能であり、IoTのメリットや可能性をを実感しながらサービス開発に発展できる

今後もIoT通信の発展により様々なモノの通信が可能になるでしょう。

IoT通信サービス(IoT SIM)を詳しく知りたい方へ

IoT SIMのホワイトペーパー

近年はIoTの様々なサービスが誕生しています。IoTの身近な利用例や将来の可能性を背景に、サービス提供者が抱えるIoT通信の課題から見えてきた、SIMの活用方法を解説します。

IoT SIMの導入を検討している方へ

IoT SIMサービスの導入について相談したいなど、ご要望がございましたら以下のボタンから移動するフォームより、お気軽にお問い合わせ下さい。

参考
  • 図解即戦力IoTのしくみと技術がこれ1冊でしっかりわかる教科書IoT検定パワーユーザー対応版(技術評論社)
  • IoTビジネス研究会 著,2020年『60分でわかる! IoTビジネス最前線』技術評論社
  • 60分でわかる! IoTビジネス最前線[改訂2版](60分でわかる!IT知識)(技術評論社)
2023年2月公開