製造業におけるIoT導入のメリットとは?
製造を含む産業全体ではドイツで誕生した第四次産業革命(Industry4.0(インダストリー4.0))でIT技術と生産工程をインターネットに繋げビジネスモデルを大きく変えました。21世紀でインダストリー4.0はドイツの国家プロジェクトであり、強力な後押しを受けた総合電機メーカーや、自動車部品製造企業、ERP(Enterprise Resource Planning)の導入パッケージを提供する企業、大手IT企業などが、経済面で著しい成長を遂げています。
製造業では、ドイツ政府の高度技術戦略から生まれたプロジェクトである「スマート工場(スマートファクトリー)」の実現に伴い、新しい価値やビジネスモデルの創出を目指す取り組みが進んでいます。スマートファクトリーは、消費者のニーズに無駄なく応える仕組みであり、工場へモノがインターネットに繋がる技術のIoTと蓄積されたデータを解析するAIの導入で、産業用IoTの一つとして実現されたものです。この記事では、IoT導入で製造ラインの関係性やデータの活用法、AI技術との関係性などをもとに製造業におけるIoT導入のメリットを解説します。
IoTとは何か(製造業における敏捷性と変革)
IoTとはモノがインターネットにつながることです。産業用では工場内の機材がインターネットに繋がりデータ通信を行い、生産工程を見える化したり、さらには工場同士が繋がり消費者のニーズに無駄なく応えるスマートファクトリーの技術でも使われているものです。製造業におけるIoTを活用した敏捷性は、設備や製品の稼働状況をリアルタイムで把握することができ、異常や故障を早期に発見し、迅速に対応することが可能になります。また、需要の変化や顧客のニーズに合わせて、生産ラインを柔軟に変更する「少量多品種生産」なども試みることもできます。IoTを活用したデータ分析やAIを活用することで、生産効率の向上や品質の向上を実現することもできるため、製造業のビジネスモデルの変革につもながります。IoTは俊敏性と変革を実現し、競争力を強化することが予測され、製造業における新たな価値創造が期待されます。
IoTの概念と製造業への影響
IoTの概念はモノのインターネットで、様々なモノがインターネットに接続され情報交換することにより相互に制御する仕組みのことです。通信データは「収集」「蓄積」「可視化」「予測」「効率化/最適化」の段階を経て活用されます。製造業への影響は、オープン化された機器(ネットワーク、ストレージ、サーバー、ソフトウェア)とネットワークのインフラ上で「収集/制御」「蓄積」を行い、工程→工場→企業レベルで情報を業務に活かすことを目指すことになります。IoTが普及すると工場現場から人がいなくなってしまうのではないかと懸念されることがありますが、作業現場では直接的な製造業務以外に、段替え作業、日報への記入、チョコ停、ドカ停への対応、不良発生時の対応、などといった間接的な業務にも時間を要しています。IoTを導入することで、このようなムダな作業が軽減され、現場担当者は作業に集中できます。定量的かつ連続して生産性について表示し、記録することができますので、担当者や設備の生産性が客観的に正しく評価できます。上手に活用している企業では、従業員を一人も減らさずに、同じ要因で売上は1.5倍に拡大している事例もあります。大切なのは経営者と現場が誤解なくコミニュケーションをとって導入することです。
IoTが製造業に与える主な利点
製造用IoTまたは俯瞰的な産業用IoTの本質は、リアルタイムで進行する事象に対してソフトウェアで自動制御することです。産業用IoTは「広域性×リアルタイム性」のニーズを満たさなければいならないため、どれも概ね同じ構成となっています。広域性とは、分散された設備・インフラに設置されたセンサーやカメラなどから様々なビッグデータを、広域ネットワークを介してクラウド上に集約する機能です。リアルタイム性とは、クラウド環境に吸い上げたビックデータをリアルタイムに処理し、自動で監視・最適化を実行する機能です。このようにIoTが製造業に与える影響は、最適化されたデータをもとに客観的に正確な評価ができることで、生産性向上につながることも利点です。
IoT導入の手順とコスト
IoT導入の手順は次のような流れで検討します。「目的の明確化」は目的によって、導入する機器やシステム、運用方法などが異なるためです。次に「現状分析」で現状の業務や設備を分析し、IoT導入によってどのような課題を解決できるかを検討します。「導入プランの策定」では目的を達成するために必要な機器やシステム、「実装」では運用方法などを検討するため、策定した導入プランに基づいて実装します。「運用・保守」では導入したIoTを運用・保守し、継続的に効果を発揮します。
導入のコストは、センサーや通信機器、データ収集・分析システムなどの機器である「機器(ハードウェア)やソフトウェアの費用」、IoT機器から収集したデータを送信する通信回線の「通信費用」、自社で開発する場合は、人的リソースやソフトウェアの「開発・運用費用」、これらを外部に委託する場合は「外注費用」が必要です。コスト削減の手段としては、開発費用を削減のため「オープンソースソフトウェアの活用」、初期費用や運用費用を削減のため「クラウドサービス利用」、IoTの有効性を検証し、導入コストを抑えるため「PoC(Proof of Concept:試行導入)による検証」が方法として挙げられます。
プラットフォーム選定からシステム構築までのステップ
製造業のプラットフォーム導入は、製造プロセスの改善や新たな価値の創造につながる有効な手段です。しかし、プラットフォーム導入には、セキュリティリスクやデータの管理などの課題もあります。プラットフォームを導入する際には、これらの課題を十分に検討した上で、導入を検討することが重要です。具体的には下図のようなステップで考えます。
導入コストとROIの関係性
製造業のIoT導入コストは、一般的に数百万円から数千万円程度と言われています。ただし、導入するシステムや規模によって、コストは大きく異なります。主に、センサーや通信機器などの「ハードウェアの費用」、データ収集・分析システムなどの「ソフトウェアの費用」「導入・運用・保守の費用」に分かれます。IoT導入コストとROIの関係性は、以下の式で表すことができます。
製造業のIoT導入においては、導入によって得られる効果を大きくしながら、IoTプラットフォームやクラウドサービスなどと活用し導入コストを抑えることで、ROIを高めることが出来ます。導入によって得られる効果の規模とIoT導入コストのバランスが重要です。
データ利活用と製造業の効率化
IoTで収集したデータは、製品の品質を予測・検知に活用することで、「品質の安定化」を図ることができます。例えば、製品の製造過程で収集したデータを分析することで、製品の不良の原因を特定し、不良率を低下させることができたり、生産プロセスの可視化や分析に活用することで、非効率なプロセスを改善し、「生産効率の向上」させることができます。設備の故障や作業者のミスを早期発見し、生産停止や不良品の発生を防止することも出来ます。
工場でのデータ収集とその活用
データ収集と活用に関しては、品質に関わるデータの収集による「品質の安定化」が目的になります。自社の製品が様々な工程を通っていく段階で良品製造条件をすべてクリアしているから高い品質が確保されているということを客観的に示す必要があるためです。
生産設備からのデータ収集手法(センサーとコネクティビティ)
ビッグデータの発生源は、多義にわたるセンサーを内蔵したモノ(部品・製品)です。IoTはあらゆるモノにセンサーが取り付けられ、リアルタイムにビッグデータを発信し続けるところから始まります。製造業でセンサーを取り付けたモノとは、あらゆるモノになります。発電・送配電や製造過程で使われる工場内のあらゆる機器など、センサーの大きさは数ミリの大きさしかなく、その中にバッテリーと通信機能が内蔵され、明るさ・場所・傾き・加速度・気圧・移動方向・重力・湿度などあらゆる様々な情報を感知してリアルタイムに発信します。これらの生産設備のデータを収集するために、センサーの性能とクラウド環境に送信するためにコネクティビティ(通信安定性)が必要になります。
AIと自動化による生産性向上
製造業で活用するAIとは、大量のデータから有益なパターンを見つけ出す技術のことです。製造分野でも、どんなデータが使えそうか、どんなパターンを見つけるAIが有益かを考えていくのが良いでしょう。例えば「画像解析」で商品の不良品判定、「予兆検知」で機械の故障の前段階に気がつくこと、「異常検知」で機械の故障検知、スタッフの安全管理、「需要予測」で出荷量予測、「自然言語/音声解析」でチャットボットの活用や部門振り分け、その他の機能では、成分配合率の計算などでも利用できるでしょう。IoT技術でモノと通信することで発生したデータを、クラウドに蓄積し、AI解析を通じて活用していくことで、「工場自動化による生産性の向上」を期待することができます。
自動化による生産業務の効率化(クラウド、IoTプラットフォーム、AIの活用)
コネクティビティを経由したビッグデータは、仮想化されたインフラであるクラウド環境に集約され格納されます。データ処理のためのサーバーや、データ保存のためのストレージ機能が必要になります。また、データ処理をリアルタイムで円滑に処理を行うためには、基本システムとしてIoTプラットフォームが必要になります。続いて人工知能(AI)は、処理されたデータを解析する役割があり、そこからビジネスでは深層学習(ディープラーニング)を用いたプログラムを使用することが多いです。AIは「機械学習及び深層学習」の技術が「画像認識」「音声認識」「言語処理」「パターン解析」などに分かれて発達しております。収集されたデータは「非構造化データ」となります。非構造化データをXMLやJSONなど、「半構造化データ」を用いて表計算ソフトのような「構造化データ」に変換をし、これを活用してAIで解析をし「法則性」を導き出すことに価値があります。解析されたデータをグラフなどで「可視化」することにより、製造工程のムダを発見するなど、工程の見直しなどで生産業務の効率化に繋げる事ができます。工場におけるIoTの導入について、導入背景と課題解決策について説明しましたので、次のページをご覧ください。
製造IoTプラットフォームと装置
インフラ構成のクラウドシステムと連動した考え方ではIoTは8つの技術階層の組み合わせで構成されています。ビッグデータの発信源「モノ」、ビッグデータが集められる通信網「コネクティビティ」、ビッグデータが格納される場所「クラウド」、ビッグデータ処理の基本となるシステム「IoTプラットフォーム」、人工知能(AI)を代表とする「アナリティクス・ソフトウェア」、産業分野ごとに開発される「アプリケーション・ソフトウェア」、顧客に提供されるサービス「導入サービス」と「運用サービス」です。この中でIoTプラットフォームは「モノからリアルタイムで収集されるビッグデータを高速に処理できる基盤(プラットフォーム)」のことを意味します。
製造のIoTプラットフォームは現場から集められたビッグデータがクラウドに蓄積され、そのデータを高速に処理するために、存在する基本となるシステムです。プラットフォームはOSやミドルウェアで構成されているためクラウド上の名称はPaaSと呼びます。クラウドの仕組みとPaaSの説明をもとにIoTプラットフォームについて解説しましたので、詳しくは次のページをご覧ください。
一般的なIoT製造プラットフォームとその利点
製造IoTプラットフォームは様々な用途で利用され、多くのITベンダーが提供しているため、共通の定義は存在しませんが、役割としては「モノがリアルタイム発信されるビッグデータを高速処理するプラットフォーム」であることです。
プラットフォームを選択する際の主要なポイント
製造IoTプラットフォームの選択では次の3つのポイントが重要です。ひとつめは「接続速度や安定性」で、製造現場で稼働している多くのIoTデバイスが存在するため、安定した通信が求められます。また、リアルタイムで収集・処理するためには高速通信も要求されます。ふたつめは「デバイスの拡張性」で、幅広いデバイス拡張・管理できる拡張性が必要で、対応するデバイスの種類、接続方式、データ分析機能、スケーラビリティ、コストなどに着目します。さいごに「セキュリティの安全性」です。機密情報、生産データが取り扱われるため、多層防御や暗号化などのセキュリティ機能を備えていることが必要です。目的に応じてどのポイントを重視するかにより、生産性向上、品質の向上、コスト削減、安全性向上などの効果が期待できます。
IoT製造装置の紹介とその役割
IoT製造装置とは、製造現場の設備や機器にIoTセンサーやカメラなどを搭載し、収集したデータをネットワークでクラウド環境に送り込むことです。代表的な例は、温度、湿度、振動、圧力などのデータ収集する「センサー」、画像や動画データを収集する「カメラ」、製品や資材にIDを付与し、追跡・管理するデータを収集する「RFID」、これらの収集したデータをネットワークに接続する「IoTゲートウェイ」です。
製造装置の選定と適応における重要な視点
製造装置の選定は目的に応じて視点が異なります。例えば、生産ラインの稼働状況や製品の品質を把握しやすくなり、生産性の向上や品質の改善につながる「生産状況の可視化」、異常を早期に発見して対応することで、設備の故障や製品の不良を防ぐことができる「異常の早期発見」、製造現場の人員を削減したり、24時間365日の監視・操作を実現する「リモート監視・操作」などです。このような目的に応じてIoT製造装置を選定することで、それぞれの役割に応じて適応されるものが見えてくるでしょう。
製造業に向けたIoT導入手順
製造業に向けたIoT導入手順は大きく分けると、現状の問題を洗い出すために「課題抽出項目」、最終的なゴール設定をするために「導入目的の整理」、目標が決定したら実際の方法を考える「具体的な導入方法」の流れで進めると良いでしょう。
課題抽出項目
課題抽出項目は主に下の表で分類することができます。手順は現状の把握、導入目的の明確化、課題の洗い出し、課題の分析、対策案策定の流れで進めていきます。
項目 | 概要 | 対策案 |
---|---|---|
技術的課題 | 専門知識や技術に関すること |
|
運用・保守に 関する課題 |
IoTデバイスの運用・保守 |
|
経営戦略や 組織体制に 関する課題 |
製造業の経営戦略における組織体制 |
|
導入目的の整理
導入目的の整理は、製造業で代表的な観点としては「3現主義(現地・現物・現実)」の考え方が有効です。自社のムダがどこにどれだけあるかを見える化することで、目的が整理できます。
目的 | 排除するべき7つのムダ | 改善後の期待できる効果 |
---|---|---|
在庫を削減 |
|
排除することで初めて後工程から引き取られた物を次工程で与えられた時間の中で生産し安定して供給できるか、前工程から必要な物が適宜供給されているか、といった事項の改善につなげていくことができる。 |
生産性、可動性UP |
|
レイアウト変更により運搬経路を長くしたり、金型の点数が増えることにより外部の倉庫や工程から離れた空きスペースから出し入れする非効率な運搬を改善できる。 |
品質向上 + 品質強化 |
|
現場のレベルアップにつながる |
付加価値 向上の追求 |
|
さらに細かい動作改善を行い、自社の強みを磨いて他社との差別化につなげる |
具体的な導入方法
導入方法は各フェーズに分けて考えることが良いでしょう。まずは目的を明確にすることで、プロジェクトのゴールを設定します。次に具体的なデータ取得のために取得するデータの検討をし、取得したデータを評価をします。データ分析をし活用するためにシステム構築も行います。最後はこれらを実施するために経営層への理解と支援を獲得し、小規模な範囲で実証実験から進めることが良いでしょう。
フェーズ | 指針 | 要点 |
---|---|---|
目的の明確化 | IoT導入の目的を明確にする | 生産性の向上、品質の向上、コストの削減など、どのような目的を達成するためにIoTを導入するのか、具体的に定義します。 |
取得する データの検討 |
目的を達成するために必要なデータを検討 | 生産ラインの稼働状況、製品の品質データ、原材料の使用量など、収集するデータの種類と量を決めます。 |
データの評価 | 取得したデータを評価 | データの質や量が目的を達成するのに十分かどうか、分析して判断します。 |
システム構築 | データ収集・分析・活用のためのシステムを構築を実施 | センサーやデータ収集装置、データベース、分析ツールなどのハードウェア・ソフトウェアを組み合わせてシステムを構築します。 |
業務フローの 再構築 |
経営層の理解と支援の獲得 | 経営層の理解と支援が不可欠であるため経営層にIoTのメリットを説明し、導入への理解と支援を得ます。 |
PoC(概念実証)の実施 | PoCでは、小規模な範囲でシステムを導入し、効果を検証します。 | |
本格導入の実施 | 本格導入では、全社または一部の工程にIoTシステムを導入します。 |
IoT導入時の課題と対策
IoT導入時の初期課題は、技術的、運用・保守に関する継続的な問題、経営戦略や組織体制に関する課題なども存在しますが、継続的な課題も存在します、初期投資も含めて維持管理も含めた総合的なコストの課題、プロジェクトを円滑に進めていく上で社内の協力も欠かせません。また取得したデータの活用方法の課題も存在します。
初期投資と維持管理のコスト問題
初期投資はセンサーやカメラなどのIoTデバイス導入、データ収集・分析のためのシステム構築、データ活用のためのアプリケーション開発が当てはまります。維持管理コストは、導入したIoTデバイスの運用・保守による定期的なメンテナンス・点検、システムの運用・保守にかかるコストが中心です。初期投資だけでも製造業では一般的に数百万円から数千万円の多額の予算が必要とされるため、維持管理費を含めて導入後の効果測定は、導入コストと導入によって得られる効果(ROI)をもとに計算をして評価をすると良いでしょう。
教育と対面抵抗感の問題
デジタル化移行を円滑に行うための組織づくりとして、現場意識が低くプロジェクトが順調に進まず、IoT導入にも課題も存在します。現場意識を高める方法としては「SOE(System of Engagement)」顧客視点の全体最適を実現するつながりを意識したシステム、「SOR(System of Records)」従来から存在する記録のためのITシステム、の2つの視点で検討することが重要です。目的として1つ目は、現状の業務の改善点を把握して最新の技術を利用して改善していく方法、2つ目は世の中の変化に対して柔軟に事業拡大を図る事業戦略側面の方法でアプローチすることが、IoT導入へ体系的に進めることができます。
データ活用の課題
データ活用の課題は主に3つ存在します。1つ目は「収集・蓄積」で機器やシステムの導入・設定、データの保管・管理など、さまざまなコストと手間がかかります。2つ目は「分析・活用」で、有益な情報を抽出するには、データ分析のスキルやノウハウが必要であり、分析結果を現場に反映して改善につなげるためには、現場の理解と協力も必要とされます。3つ目は「セキュリティ」で、機密性の高いデータが外部に漏えいするリスクが高まるため、対策を講じることが必要とされます。
課題解決のための具体的なアプローチ
「収集・蓄積」ではIoT機器やシステム導入・設定を標準化し効率化することが必要です。またクラウドサービスを利用することでコストと手間の削減に繋がります。「分析・活用」ではノウハウを蓄積するために社内勉強会の実施、外部研修の参加を積極的に行いましょう。また導入時はデータ分析を得意とする企業に外部委託する方法も有効です。「セキュリティ」ではIoT機器やシステムのセキュリティ対策を強化し、データの暗号化やアクセス制限をすることで安全性を高めることができます。
IoTと製造業の未来(変革の継続)
2018年、内閣府が第5期科学技術基本計画において、日本が目指すべき未来社会の姿として「Society 5.0(人間中心社会)」が提唱されました。Society(ソサエティー)とは、「狩猟社会(Society1.0)」「農耕社会(Society2.0)」「工業社会(Society3.0)」「情報化社会(Society4.0)」とバージョンが存在するものです。IoTが実現するSociety5.0が目指す社会は、サイバー空間とフィジカル空間が高度に融合し、経済発展と社会的課題の解決が両立した新たな社会のことです。IoTは、Society 5.0の実現に欠かせない技術であり、その可能性は非常に広大です。製造業では生産効率の向上や、物流の効率化を目指すことが主な目的となります。具体的には製造現場のIoTデバイスに取り付けられているセンサーやカメラやRFIDタグのあらゆる機器や設備からデータを収集し、分析することで、生産性の向上や品質の改善、コスト削減などの効果を期待できます。
IoTが製造業の未来をどのように変える可能性があるか
IoTは製造業のあらゆる場面で活用でき、未来を大きく変える可能性を秘めています。具体的には効率的、高品質、柔軟性向上、環境に配慮の観点で、製造業のあり方が大きく変わると考えられています。
項目 | 概要 | 具体例 |
---|---|---|
生産性の向上 | 製造現場のあらゆるデータの収集・分析 |
|
品質の向上 | 製品の品質UP |
|
柔軟性の向上 | 事業拡大への可能性UP |
|
環境負荷の低減 | 省エネ利用や廃棄物処理の有効的な対策 |
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デジタル化とオートメーションの進展による製造業界の変化
製造業のIoTはデジタル化にともない自動化(オートメーション)が期待できます。具体的には工場や倉庫にロボットを導入し、生産や在庫管理などの業務自動化を目指すことができます。例えばAMR(Autonomouse Mobile Robot(自律走行搬送ロボット))と呼ばれる高度な搬送自動化が人間に変わり働いてくれるようになります。部品のピッキングや製品置場から出荷置場までの集荷の自動搬送で利用されたりします。「ライントレース式」「SLAM式」「ランドマーク式」とグレードが上がるに連れて、目印に沿って自動走行をする自走の走行が可能となり、障害物などもロボット自身が判断をして避けることができます。業務自動化によりロボットと人間の共存共栄が期待できるでしょう。
IoTによる製造業の変革とその意義
IoTは様々なモノがインターネットに接続する技術ですが、製造業のIoTは様々なモノやヒトからデータを得て処理し、現実世界へフィードバックする一連の活動が価値を生むと言われています。現実世界の活動にプラスして新たな価値を生み出すことがポイントになります。
現場業務の変革とその成果
製造現場では、生産性向上、品質の向上、安全性の向上が挙げられます。その結果「生産量の増加」「コスト削減」「顧客満足度の向上」「環境負荷の低減」の成果が期待できます。製造現場が変わると会社全体が安定して生産を継続できるので、企業が提供できる範囲も拡大し生産量増加だけではなく、サービスや製品の質が向上しエンドユーザーからの指示が向上することで、製品がさらに売れるようになります。製品が顧客からの支持向上されると、製造現場への発注量も増加されるので、企業全体としても製品が売れ続けることで好循環が生まれます。IoTは製造業の現場業務を変革し、製造業の競争力を高める上で重要な技術です。IoTのさらなる普及により製造業の現場業務は更に進化していくと考えられます。
IoT導入の製造業への影響とその意義
様々な製造業の企業がIoT導入するとビジネスモデルが変わると言われています。IoTの変革に先頭に立って取り組む製造業は「オーダーメイド」と「アフターサービス」の両立が可能です。モノから収集したデータをもとに分析し顧客のニーズに応えることや、製品アップデートもエンドユーザーからの利用データをもとに考えることができ、製品購入後もユーザの利用状況の把握による、きめ細かいサポートにも取り組むことが可能です。IoT分野は世界中の大企業が挑んでいく中、日本企業もこの世界でどのように戦っていくか、今後は様々な戦略をもとに新たなビジネスの可能性が秘めている、広大なフィールドであることは間違いないでしょう。
IoT通信についてもっと知りたい方へ
製造業界でも近年はIoTの導入が増加しています。生産ラインの効率化、品質管理、定点観測に対して、IoTの組み込みが行われています。資料では製造業のIoTネットワークに関する導入メリットをご紹介します。
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