さくらのIoT

さくらのセキュアモバイルコネクトに限らずモバイル回線をご利用いただく中で、うまく接続できない/通信できないけど何が起きているかわからない、というパターンがあるのではないでしょうか?
そのような状況での問題解決に向けての一助として、モデムトレースをご紹介します。

モデムトレースとは

モデムトレースは、 LTEモデムの動作を記録したもので、モデムから送受されるモバイル網への制御通信/データ通信が記録されたものことを指します。
このモデムトレースを利用することで、実動作を把握することができ、結果的にデバッグ作業の効率化や、不具合の早期発見・修正が可能となります。
一般のサーバーで同じようにうまく通信できないときは、通信インターフェイスのパケットキャプチャなどで詳細を調べたりしますが、同様にモデムの制御に使用するATコマンドインターフェイスからだけでは得られない詳細な通信状況を把握することができます。
この資料では、Nordic社のnRF9160を用いて説明を行いますが、多くのLTEモデムでも同様の機能を備えており、同じようにデバッグが可能です。ただし、可能ではありますがモデムベンダによって別途契約が必要だったりしますので、ご利用のモデムでのモデムトレースの利用方法についてはモデムベンダへお問い合わせください。

補足事項

ここで紹介するデバッグ内容は、基本的にはモデムとキャリアの基地局との間での情報のやり取りがメインの為、多くがさくらインターネットとしてサポートできる範囲外の範囲となりますが、自己解決や、モデムベンダと連携して問題にあたるための一助になると考えておりますので、ぜひこの情報を有効にご利用いただければと思います。

LTE接続について理解を深めながら、トラブルを解決

LTEの接続は、モデムとキャリアの設備の連携動作により成り立っています。
MVNOであるさくらのセキュアモバイルコネクトを利用する際には、更にMVNOとしての設備動作も連携して動作が成り立っています。そのため、非常に多くの複雑なやり取りをモデムとキャリアの基地局の間でやりとして接続を実現させています。

しかしながら、ユーザ側ではそれら設備の状況を直接確認する手段がなく、モデムの出力するメッセージだけが頼りになってしまいます。多くのモデムは簡単なATコマンドだけで接続処理を行うため、モデムから出力されるコマンドの応答値の情報だけでは接続に何か問題が生じた際に、どこに原因があるのかを明確にすることが難しい場合があります。

そこで、より詳細なモデムの動作状況を確認ができるモデムトレースを取得することで、そのモデムとMNOの基地局の間のやり取りを記録することができ、問題の調査に大変役立ちます。
また、全てのプロトコルを明快に理解するのは大変な労力を要しますが、必ずしもその必要は無く、代表的なエラー状況時のモデムトレースへの現れ方だけでも把握しておくことで、大抵の問題には対処できる事でしょう。

今後、本資料でもよくあるトラブル時の状況の例をいくつか取り上げていく予定ですので、是非参考にしてください。また、代表例以外の問題が起きた場合でも、モデムトレースを抑えておくことでモデムベンダに調査を依頼するなどの際に役に立てることができますのでご活用ください。
加えて、ユーザの目的とするアプリケーションによってはクラウドサイドのIPネットワーク構成も非常に複雑なものになることがありますが、モデムトレースとしてIPレイヤの情報を取得できるモデム(nRF9160は取得できます)もありますので、なんらかの通信トラブルがあった際に、サーバ側のパケットダンプデータと突き合わせるなどを行うことで、IPネットワーク設計に問題が無いかを確認することができたりもします。
こちらについても、今後取り上げていく予定ですので、是非参考にしていただければと思います。

nRF9160でのモデムトレース利用方法解説

それでは、モデムトレースの利用方法を解説していきます。

このトレースを試す前に用意するもの

ハードウェア

項目 詳細
1 nRF9160DK Nordic社製
https://www.nordicsemi.com/Products/Development-hardware/nrf9160-dk
今回説明で使用するLTEモデムはnRF9160を
搭載した評価ボードです。
2 microUSB-B USB cable nRF9160DKをPCに接続するためのケーブルです
(nRF9160DKにはケーブルは添付されていないため)
3 さくらのセキュアモバイル
コネクト マルチサイズSIM
https://iot.sakura.ad.jp/sim/
さくらのセキュアモバイルコネクト
(サービスの利用に必要なSIMカード。
nRF9160DKボードで利用しやすいnanoサイズカード
タイプを選択できるマルチサイズSIMを用意します。)
4 Windows PC 本資料ではWindows PCを使用した場合で例示させていただきます。他OS機については必要なツール等ユーザ側のご判断でご利用ください。

ソフトウェア/サービス

インストール及びサービス契約を済ませておいてください。

項目 詳細
1 Tera Term https://teratermproject.github.io/
シリアルコンソールでのnRF9160の制御に利用します。
2 nRF Connect for Desktop https://www.nordicsemi.com/Products/Development-tools/nrf-connect-for-desktop
nRF9160のファームウェアの書き換えやトレースツールとして利用します。
3 Wireshark https://www.wireshark.org/
nRF9160のトレースデータや、サーバのtcpdumpデータの確認に利用します。
4 さくらインターネットの会員ID(法人名義) さくらのセキュアモバイルコネクトの利用時に必要です。
お持ちでない場合は さくらインターネット会員登録から会員IDを取得します。
【参考】さくらインターネット 会員IDの取得

環境

項目 詳細
1 LTEの電波が入る場所 さくらのセキュアモバイルコネクトはLTEでの接続を行うサービスです。SoftBank、Docomo、KDDI3キャリアともにLTEで良好に通信できる場所を用意することをお勧めします。
2 インターネット接続環境 クラウドサービスのコントロールの為、何らかのインターネット接続環境でインターネットへの接続が必要です。

ここまで用意ができたら…

次にコラムページに進んでください。
モデムトレースを利用したさくらのセキュアモバイルコネクトのLTE通信デバッグ方法(2)

構成・執筆・編集
DX事業部

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2024年2月公開